俳句の事は判りませんがひょんなことからある句誌に俳人が寄稿された原紙が長い間眠っていました。

多くの句は書道用の半紙に書かれていますが、長い時間が経ちシミなどが点在します。

それをパソコンで処理したものです。

 

 横山白虹(よこやま はっこう)

赤き月出て半眼の蟇すわる(あかきつき でてはんがんの ひきすわる)

 

 

夕顔に月光のせて蛾が来る(ゆうがおに げっこうのせて ががくる)

 

虹鱒を霧の草生に釣りおろす(にじますを きりのしばふに つりおろす)

 

秋あつし紙の飛行機窓とび出す(あきあつしかみのひこうきまどとびだす)

春の夜の船のポストを尋(と)めあてぬ(はるのよの ふねのぽすとを とめあてぬ)

目賀田思水(めかたしすい)

しみじみと月なき夜を楽しまむ(しみじみと つきなきよるを たのしまむ)

秋元不死男(あきもとふじを)
売文や夜出て髭のあぶらむし(ばいぶんや よるでてひげの あぶらむし)

 

 加藤 楸邨(かとう しゅうそん)

野分の馬打つて馬よりかなしきらし(のわきのうまうって うまより かなしきらし)

不明 本田あふひ(ほんだ あおい)

喜寿と言う齢を持って屠蘇をいただく(きじゅという よわいをもって とそをいただく)

 

 

瀧春一(たきしゅんいち)

白南風や さるとりいばら すっくと立ち(しろはえや さるとりいばら すっくとたち)

沈黙の茂り蔓草奔放に(ちんもくのしげり つるくさ ほんぽうに)

泳ぐ脚一対もてり 海の蟹(およぐあし いっついもてり うみのかに)

 

 細谷源二(ほそたにげんじ)

みな生きようと妻の種まき風に飛ぶ (みないきようと つまのたねまき かぜにとぶ)

真赤なる野火の彼方にはす心(まっかなる のびの かなたにはすこころ)

蝶羡し蝶には鍬はもてぬけれど(ちょう うらやましちょうには くわはもてぬけれど)

 

 

伊丹三樹彦(いたみみきひこ)

 

洋傘の尖 浸けても泉 濁し得ず(ようがさのとがり つけてもいずみ にごしえず)

マチス展 わが提げ歩く 洋黒し

鉄橋暗黒帯なすヘッドライトの他(てっきょうあんこく おびなす へっどらいとのほか)

 

 

中村 草田男(なかむら くさたお)

眞直ぐ往けと白痴が指しぬ秋の道(まっすぐいけと はくちがさしぬ あきのみち)

富安風生(とみやすふうせい)

いと好む 雛のまへに いくたびも(いとこのむ ひなのまえに いくたびも)

 

篠田悌二郎(しのだていじろう)

冬水に瀕死の金魚華麗なり(ふゆみずに ひんしのきんぎょ かれいなり)

 

 

高野 素十(たかの すじゅう)

南門の柱の下の木の実かな(なんもんの はしらのしたの きのみかな)

不明清水清風?

渓流や秋ひるがえるをの多く(けいりゅうや あきひるがえる をのおおく)

 

橋本鶏 二

火を噴きしあと静かなり山の秋(ひをふきし あとしずかなり やまのあき)

不明 清逢女

淋しさは秋の野に在り歩のゆるみ(さびしさは あきののにあり ほのゆるみ)

福田蓼汀 (ふくだ りょうてい)

月光にふれてひからぬ梅ぞなき(げっこうに ふれてひからぬ うめぞなき)

 

長谷川かな女(はせがわかなじょ)

野火消えて溝にあつまる白き鶏

 

金子 兜太(かねこ とうた)

暗く鋭く石垣水漬く被爆の館(くらくするどくいしがきみづくひばくのたて)

光る子へ眼の正確な夕暮漁夫(ひかるこへめのせいかくなゆうぐれぎょふ?)

 陽当たる階へ 被災の ごとき ミサの了り

松原地蔵尊 (まつばら じぞうそん)

桜餅夜ゆく旅の出に匂う(さくらもち よるゆく たびのでににおう)

大場白水郎

落椿さらへる波の打返し

 

松野自得

人の一生いつも木の芽のふくやうに

 

榎本冬一郎(えのもとふゆいちろう)

虹にこもる音響未完の一鉄船(にじにこもるおんきょうみかんのいってつせん)

 

阿部みどり女(あべみどりじょ)

 

風落ちしとき松籟す浜豌豆 (かぜおちし ときしょうらいす はまえんどう)

松籟:松の梢に吹く風

又も雨がもたらす暗さ菖蒲池 (またもあめがもたらすくらさしょうぶいけ)

 

永田耕衣(ながたこうい)

 青年を呼びつつありき鵙の贄(せいねんをよびつつありきもずのにえ)

 

中島斌男(なかじま たけお)

冬白浪燈台守と名刺交はす(ふゆはくはとうだいもりとめいしかわす)

 

高浜年尾(たかはま としお)

土器に浸みゆく神酒や初詣(かわらけにしみゆくみきやはつもうで )

 

 

田村 木国(たむら もっこく)

指して能登は見えざる秋くもり(さして のとは みえざる あきくもり)

皆吉爽雨(みなよしそうう)

春草を踏みてをりをり堆し(はるくさを ふみてをりをり うずたかし)

不明?

一本の花傘下の一職場(いっぽんの はなさんかの いちしょくば)

池上浩山人

一管の笛の眼れる冬館(いっかんの ふえのねむれる ふゆやかた)

 

池内たけし(いけうちたけし)

まだ小さき青柚なりしがもたらしぬ  

松本たかし(まつもとたかし)

宝珠不壊 蘇鉄の花の 秋に入る(ほうじゅふかいそてつのはなのあきにいる) 

 

 

石川桂郎(いしかわ けいろう)

久に来て杉並区椋鳥群れゐたり(きゅうにきてすぎなみくむくどりむれいたり)

 

夕蛙どの畦の何処曲がらうか(ゆうがえるどのあぜのどこまがらうか)

父と子のはしり蚕豆飛ばしたり(ちちとこのはしりそらまめとばしたり)

不明

芋堀の夫は一休み草に坐す(いもほりの おっとはひとやすみ くさにざす)

西東三鬼(さいとう さんき)

緑陰に3人の老婆わらへりき(りょくいんに さんにんのろうば わらへりき)

不明

茨の香や刈れるばかりに麦のあり(いばらのかや かれるばかりにむぎのあり)

 

星野立子(ほしのたつこ)

行人にかゝはり薄き野菊かな (いくひとにかかはりうすきのぎくかな)

 

平畑静塔(ひらはたせいとう)

老俥夫や酔はねばならぬ鹿の声 (ろうしゃふやよわねばならぬしかのこえ)

不明(わからない)

飾りなき落葉ため地の恋心(かざりなき おちばため きたのこいごころ)

 

石塚友二(いしづかともじ)

 雨降るや冬木の中の翌檜(あめふるやふゆきのなかのあすひのき)

山口青邨(やまぐちせいそん)

菊咲けり陶淵明の菊咲けり

飯田蛇笏(いいだだこつ)

海老飾る山廬門都雪景色(えびかざる さんろもんと ゆきげしき)

山廬という呼称は、蛇笏が「山の粗末な建物」と自らの居宅を表現した創作である

 

 

大野林火(おおのりんか)

この髪の風に流るゝ五月来ぬ(このかみのかぜにながるるさつききぬ)

 

高柳重信(たかやなぎしげのぶ)

吹き沈む野分の谷の耳さとき蛇 (ふきしずむのわきのたにのみみさときへび)

 

安住 敦(あずみ あつし)

ある朝の鵙ききしより日々の鵙(あるあさのもずなききしよりひびのもず)

私には俳人の名前などは正確に分かりませんが、徐々に調べていきたいと思います。

 

お気づきの点があったらお教え願います。

 

作者の敬称は略させていただきます。